JASMiRT2回国内ワークショップ

「福島第一原子力発電所事故を教訓とした構造工学分野からの安全性向上を目指して

現実的現象把握によるパフォーマンス評価とその安全性向上への活用

(ワークショップ報告(2018/10/3掲載) [PDF])

 

                記

・日 時:平成30823日(木) 10:0019:00

                24日(金) 10:0012:30

・場 所:電力中央研究所 大手町地区 733大会議室(823日)

        電力中央研究所 横須賀地区 新本館大会議室(824日)

 

プログラム 一日目823日):電力中央研究所 大手町地区 733大会議室

時 間

講 演 題 目 ・ 講 師 ・ 講 演 概 要

司 会

10:00

10:10

主催者代表挨拶                   (東京大学 高田毅士)

東京大学

笠原直人

10:10

10:40

基調講演「安全性向上に向けて構造工学分野への期待 (横浜国大 白鳥正樹)(PDF)

原子力プラントの構造健全性設計/評価は、建屋、機器に作用する応答(加速度、変形、応力等)がそれぞれに対して定められた許容値を超えないという基準で行われる。地震荷重を考えた場合、応答の評価および許容値の決定プロセスに大きな不確かさが内在しており、結果として大きな安全裕度をとらざるを得ない。この安全裕度を定量的に把握することは難しく、また機器ごとに裕度の大きさが異なっている。このことが構造物システムとしての合理的な健全性設計/評価を困難にしている。現在、この不確かさを定量的に評価する様々な試みが行われているが、本講ではこのような試みに対する私見と期待を述べる。

10:40

11:40

セッション1 金属材料の破壊・劣化現象と強度評価

日立製作所

宮崎克雅

「設計を超える状態に対する構造強度分野からのアプローチの意義と課題 −破壊制御技術の適用による大規模バウンダリ破壊の防止−」(東京大学 ○佐藤拓哉、笠原直人)(PDF)

深層防護は設計状態(DBE)と設計を超える状態(BDBE)に大別される。構造強度工学は主にDBEに適用され、圧力バウンダリの構造健全性を確保する役割を担ってきた。BDBEに対しては主に安全工学分野からのアプローチにより影響緩和が図られてきた。ここでは、BDBEに対して構造工学を適用することにより、効果的な影響緩和策が可能な状況にすることの意義と課題について述べる。具体的には、破壊制御技術を適用することにより、圧力バウンダリの小規模破壊を先行させて荷重を緩和することにより、大規模破壊を防ごうとするものである。

「事象把握のための破壊試験と解析的取組み −模擬材料を用いた構造物クリープ試験の実施−」       (三菱重工 ○廣瀬悠一、片渕紘希、首藤伸伍、中馬康晴)(PDF)

原子力プラントにおけるシビアアクシデント時の破壊メカニズムを把握し、破壊による被害を低減させるための破壊制御の考え方の検討に資することを目的に、原子炉容器モデルの内圧クリープ試験を実施している。試験体には鉛をベースとした模擬材料を適用して、100未満の比較的低い温度でクリープによる破壊現象を詳細に確認できることが特徴である。これまでの試験から、構造不連続部の有無による破壊位置やき裂方向の違いなどを確認しており、これらの結果に基づき、終局破壊を再現するための解析手法や破壊制御の考え方について検討を進める。

「既往研究で取得された関連材料特性データの現状 −オーステナイト系ステンレス鋼の超高温材料特性式の開発−」JAEA ○鬼澤高志、下村健太、加藤章一、若井隆純)(PDF)

原子力プラントにおけるシビアアクシデント時の構造健全性評価に適用することを目的に、オーステナイト系ステンレス鋼の超高温材料特性式を開発した。具体的には、SUS304およびSUS316に対して、1000までの引張試験およびクリープ試験を実施して、取得したデータより超高温の材料特性を評価した。さらに、取得データおよび評価結果に基づき、高速炉設計用として650まで整備されている各種材料特性式との接続性を考慮しつつ、1000まで適用可能な弾塑性応力-ひずみ関係式およびクリープ特性式を開発した。

11:40

12:40

昼 食

 

12:40

13:40

セッション2 コンクリート材料の変質と部材性能評価

電中研NRRC

梅木芳人

「運転期間延長認可制度とコンクリート構造物の特別点検」(関西電力 北川高史)(PDF)

 2013年に法制化された原子力発電所の運期期間延長認可制度では、認可申請にあたってコンクリート構造物の特別点検が義務付けられており、強度低下及び遮蔽能力低下事象に着目し、条件が厳しい場所で採取したコアサンプル等による強度、遮蔽能力、中性化深さ、塩分浸透及びアルカリ骨材反応の確認が要求されている。国内で初めて認可を受けた高浜発電所12号機及び美浜発電所3号機では、規制要求に基づき、点検方法、点検場所等を具体化のうえ点検を実施した。そのプロセス、結果等について報告する。

「放射線照射がコンクリート特性に及ぼす影響」        (鹿島建設 紺谷修)(PDF)

原子力発電所の長期安全運転に向けて、運転期間の長期化に伴いコンクリートの放射線累積照射量が大きくなるため、放射線照射に対するコンクリートの健全性評価の重要性が増大する。一方、コンクリートに対する放射線照射試験は1960年代から行われてきたが、放射線がコンクリート特性に及ぼす影響やその影響を引き起こすメカニズムについては、必ずしも明確になっていない。このため本研究では、中性子およびガンマ線の加速照射試験を行い、放射線がコンクリート特性に及ぼす影響について検討し、コンクリート強度・剛性に影響があることを確認した。

「廃止措置プラントを活用したコンクリート健全性評価研究」 (中部電力 島本龍)(PDF)

原子力施設におけるコンクリート構造物は支持機能や遮蔽機能が要求されており、コンクリートの健全性評価が重要視されている。コンクリートの強度や遮蔽能力は、コアサンプリングによるコア強度や中性化等の確認を行っている。しかし、建屋から多くのコアを採取することは、構造物に損傷を与えることになるため、非破壊試験や数値解析を有効に活用し、コア採取数を最小限に抑えた合理的な健全性評価が望まれている。このため、廃止措置中の浜岡発電所1号機原子炉建屋を活用し、コンクリート構造物の合理的な健全性評価手法の構築を目指している。

「原子力発電所の建屋の材料、構造及び工法の開発」

        (三菱重工 ○山本知史、日立GEニュークリア・エナジー 若杉健一、

                              東芝エネルギーシステムズ 槗宗孝)(PDF)

平成25年に施行された国の新規制基準では、原子力施設に想定する外部ハザードの種類は多くなり、またその大きさは増大傾向にある。外部ハザードに対して有効な対策の1つである壁厚の増加は、逆にコンクリートの物量(重量)増加による耐震性の低下等に繋がる可能性がある。このため、本研究では、建屋の安全性向上のため、コンクリートの物量を抑えつつ外部ハザードにも抵抗できる建屋を目指し、原子力施設では採用実績のない高強度等のコンクリート材料の適用について検討することとした。

13:40

14:40

セッション3 建屋・機器・配管の応答挙動と解析法

東京大学

山田知典

「高性能計算を利用した原子力発電所建屋の3次元非線形地震応答解析」

                                                                               (東京大学 堀宗朗)(PDF)

鉄筋コンクリート原子力発電所建屋の地震応答解析を高度化する一策として、並列有限要素法を利用したソリッド要素詳細解析モデルの利用が検討されている。相互作用の項を含まない非線形波動方程式を数値解析することで、構造物−地盤相互作用をより正確に評価することが期待できるからである。本講演では、並列有限要素法とソリッド要素詳細解析モデルの概要を説明し、実構造物を対象とした3次元非線形地震応答解析の例を紹介する。

「原子炉建屋の耐震評価のための三次元モデル化手法の標準化への取り組み」

                                JAEA ○西田明美、崔炳賢、塩見忠彦、李銀生)(PDF)

計算工学及び計算機技術等の発展により、近年は構造解析等において実形状に基づく三次元モデルが作成され、応力解析や応答解析等に活用されている。原子炉建屋においても、三次元モデルは耐震性評価等に活用されつつある。しかしながら、三次元モデルの精度にはばらつきがあり、原子炉建屋のように実大実験が困難な規模の構造に対しては、解析結果の妥当性が課題となっている。このような状況を踏まえ、JAEAでは原子炉建屋の三次元モデルの構築手法の標準化への取り組みを開始した。本発表では、その概要について述べる。

「原子力配管に対する確率論的破壊力学の適用」JAEA ○勝山仁哉、山口義仁、李銀生)(PDF)

地震に起因する確率論的リスク評価(PRA)に資するため、従来の設計基準を超える地震動に対応した亀裂進展評価手法を確率論的破壊力学(PFM)解析コードに導入し、原子力配管における経年劣化を考慮してフラジリティ評価を行う手法を整備した。また、同コードに信頼度評価機能を導入することにより、高信頼度低損傷確率を数値指標とした耐震裕度の定量評価が可能であることを示した。本発表では、以上のようなJAEAにおけるPFM評価に係る最近の取組みについて概説する。

14:40

15:00

休 憩

 

15:00

16:00

セッション4 リスク評価とパフォーマンスベース評価、および安全性向上への活用

福井大学

月森和之

「自然ハザードに対する原子力発電所のレジリエンスの考え方」(東京大学 糸井達哉)(PDF)

本発表では、原子力発電所のレジリエンスを、変化に対応し、変化していく、つまり、システムの安全性向上そのものであり、「システムがその存続期間を通して目的・目標を保持する能力」と定義することを提案する。また、その要素として「目的・目標の設定と見直し」、「存続期間の評価」、変化に対する「認識」「価値判断」「行動」であることを示すとともに、人や組織の役割としてアジリティ、マネジメントとリーダーシップの必要性を議論する。

「確率論的リスク評価から得られる情報の活用について」(電中研NRRC 南則敏)(PDF)

リスク情報活用による安全性の継続的な向上のためには、従来の決定論的なリスク評価に加え、確率論から得られるリスク情報も活用していく必要がある。これらについて、現在電気事業者で進めている取組について紹介するとともに、将来的な活用の推進方策について議論する。

 

「システム化規格概念に基づく液体金属炉用供用期間中検査規格

ASMEコードケースN-875                               JAEA 浅山泰)(PDF)

ASMEボイラー及び圧力容器規格Section XI Division 3(液体金属炉用の供用中検査規格)に対して、2017年にシステム化規格概念に基づくCode Case N-875が発刊され、従来よりも合理的な検査計画が適用可能になった。本稿ではコードケースの内容を審議の経緯を含めて紹介するとともに、現在ASME規格委員会において本コードケースの概念を取り入れながら開発が進められている、軽水炉を含む多様な炉型をカバーする維持規格案の動向にも言及する。

「川内原子力発電所の第1回安全性向上評価の概要について」(九州電力 江藤和敏)(PDF)

新規制基準の適合性審査に合格、再稼働した原子力発電所は、原子炉等規制法に基づき、安全性向上評価を実施し、原子力規制委員会に届け出ることとされており、九州電力川内原子力発電所12号機については、平成297月及び9月に第1回届出を行った。今回、この届出内容についてご紹介するとともに、原子力規制庁との「実用発電用原子炉の安全性向上評価の継続的な改善に係る会合」における後続プラントヘの反映も念頭においた今後の安全性向上評価の継続的な改善に向けた議論を経て、原子力規制委員会に報告された、同評価の改善事項について、その対応状況を合わせて説明する。

16:00

16:10

休 憩

 

16:10

17:20

パネルディスカッション「安全性向上に向けた構造工学分野の課題と展望」

 パネリスト  横浜国大 白鳥正樹、東京大学 佐藤拓哉

        電中研NRRC梅木芳人東京大学 堀宗朗JAEA 浅山 泰

ü  セッションごとの課題と展望

ü  論点1:設計基準外事象を含む事故シナリオ想定、リスク評価および事故影響緩和を行うには、どのような技術が必要か。

ü  論点2:論点1に照らして、各分野の現状の技術はどのレベルか。

ü  論点3:論点1の技術を達成するため、どのような方針を立て、何から着手すべきか。

ü  まとめと総括

モデレーター

東京大学

笠原直人

17:30

19:00

意見交換会